痩身剛腕記

劇団唐ゼミ☆ 椎野裕美子のつれづれ

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あれからのジョン・シルバー 幕

わたしに一筋の光が射したのは昨年4月。
はっきり言って、芝居がやれるとは思っていなかった。
とにかく生まれたての人間というものが
両方の手のひらの上でおさまってしまうほど小さく脆弱で、
肌の皮はポロポロとれ、しわしわで、
目がうつろなものであるとは全く知らず、
陣痛がはじまってからの目まぐるしい新生活は、
ひたすらに体力と気力を消耗させた。
据え膳上げ膳マッサージ付きの贅沢環境にいながらも
ちっとも体力は回復せず、
乳首を噛みちぎるようにむさぼるこどもに母乳を与え続け、疲弊していた。
まわりを見渡せば似たような若き母親がこどもとお洒落をして
ウキウキとショッピングに繰り出している。
一方自分はこどもを抱えてわずか20m先の八百屋に食料を買いにいくのが試練だった。
朝起きて、母乳を与え、洗濯をし、倒れこむように寝ていた。
こんなに体力が落ち、日々の生活だけで気絶しているようでは芝居に立ち向かえるわけがない。
日に日に自信というものが消えていくのがわかった。
暗澹たる気持ちとはまさにこういうことをいうのか。
この子とともに生き、舞台に立つ方法など考えもできなかった。
だが月日がたつと、次第にこどもは肉がつきふっくらとしてきた。
首が座り、ニヤリと笑うようになってきた。
ケラケラと笑い、ゴロゴロ転がりだした。
かと言って、私の体力が戻るわけではなかったが、思い切って
「なんとか舞台に立てないだろうか」と中野に投げかけた。
「家からそう遠くない場所に佐藤信さんの劇場がある。劇場ならば昼公演も可能だ。そこでやろう」
たくさんの障壁があることは容易に想像ができたが、
わずかでも舞台に立てると思っただけで
欲望というものがムクムクと沸き起こってくるのがわかった。
芝居にいかれた人間はこれほどまでに単純で、おバカさんなのだ。
桜の花が咲き出す直前だった。
読み合わせがはじまった。呂律が回らない。情けない。
でも、充実した何かがあった。
劇団のみなに予定を合わせてもらい、稽古時間を調整してもらった。
いつも以上に小道具を整えてもらい、衣装もお願いした。
遠方の家族を横浜に呼び寄せ、何度も何度もこどもを預かってもらった。
こどもも自分も体調を崩した10月は、本気で落ち込み、絶望的な気持ちになった。
そんな時には、唄が届き、エネルギーを注入してもらった。
そして年末年始の追い込みで劇団員、強力な客演陣のエネルギーに支えられ
とうとう「あれからのジョン・シルバー」が初日を迎えた。感動的だった。
1日1日が刺激的で、毎公演毎公演充実していた。
焼け跡の空の青色、マストをはためく風、亡者がゆれる幽霊船、
そしてジョン・シルバー。
信頼している仲間とともに、唐さんの台詞の洪水に身を浸している悦楽。
客席で目を輝かせている共謀者との関係にゾクゾクしながらの2時間20分。
平日の昼公演を含めたった8公演しかなかったけれど
客席も60人も入らないほどの数だったけれど
足をお運び頂きましたみなさま、本当にありがとうございました。
そして日頃から唐ゼミを支えてくださっているみなさま。本当にありがとうございました。

どうぞ、これからも唐ゼミをよろしくお願いします。

椎野裕美子 
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プロフィール

痩身剛腕

Author:痩身剛腕
劇団唐ゼミ☆ 役者

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劇団唐ゼミ☆ 第27回公演
『あれからのジョン・シルバー』
 作:唐十郎 演出:中野敦之
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2018年
1月13日(土)14:00
1月14日(日)14:00
1月15日(月)14:00
1月16日(火)14:00
1月17日(水) ※休演
1月18日(木)14:00
1月19日(金)14:00
1月20日(土)14:00
1月21日(日)14:00

場所:横浜 若葉町ウォーフ

前売/3,200円 当日/3,600円 
学生/2,800円 学生当日/3,200円
※平日公演は200円引き
チケット予約フォーム→こちら

公演詳細は劇団唐ゼミ☆HPをご覧下さい!
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