痩身剛腕記

劇団唐ゼミ☆ 椎野裕美子のつれづれ

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大鶴美仁音 『父のこと』

幻戯書房という出版社から出た唐十郎『ダイバダッタ』に
唐さんの娘さんである大鶴美仁音さんのエッセイが載っている。

この文章はとてつもない。

美仁音とはじめて会ったのは、私が大学生の時。
彼女は小学生だった。
明るく活発で、正義感が強く、人を楽しませるのが大好き。
そして、ひとの心を読み取るのが本当に上手だった。
そっと寄り添ってくれるやさしさに私は何度も助けられた。
いつの間にか美仁音は女優になり大学も卒業し、綺麗になったと思っていたら
こんな文章を書けるまでになっていたんだ。
さすが唐十郎の娘だ。

そのエッセイは、唐さんが脳挫傷をしたときの回想からはじまる。
ドロリとした血を流す唐さんの頭の重さが生々しく描写される。
私も触ったことがある。唐さんの頭。
この頭の中でどんな妄想が渦巻いているんだろうと恐る恐る触った。
その頭が地面に叩き付けられたのだ。
「スイカがグチャと割れたような音がした」という一文に
思わず目をつぶった。

エッセイは、美仁音からみた父の不思議な着眼点、父の執筆風景、父の料理、
父の仕事場、父との稽古、父の横顔、父との禁酒紛争が描かれる。
そして、父に宿る「天才」という、悪魔から授かった能力が、
時に狂気を呼び覚まし、家族、そして劇団員を
いかに困惑させ続けたかが書かれている。
父は歳を重ねるにつれて自分の中の悪魔をコントロールできなくなり、
今回の脳挫傷という大事故にまでなってしまったと。

美仁音はエッセイは驚くほど赤裸裸だ。
このエッセイを書いて不安もあったと思う。
でも、唐さんから目を逸らすことなく
唐さんに育んでもらった感性を総動員して
ド直球で絞り出したこの文章に心を打たれた。

そして、その内容に心が鷲掴みにされて
私は下唇を強く噛むことしかできなかった。

美仁音は父のことを書いていかねばならないし
美仁音の将来の一部はそのためにある。
そう強く思う。
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